今後の御陵及び御喪儀のあり方についての 天 皇 皇 后 両 陛 下 の お 気 持 ち 平成 25 年 11 月 14 日

今後の御陵及び御喪儀のあり方についての
天 皇 皇 后 両 陛 下 の お 気 持 ち
平成 25 年 11 月 14 日
宮 内 庁
昨年秋,皇后陛下のお誕生日に際し,宮内記者会から皇后陛下に,今後の御陵及
び御喪儀のあり方についてのお気持ちをお聞かせいただきたいという質問があり,
その折皇后さまには,このようなことを陛下に先立ちご自分がお答えになることへ
の御懸念がおありのようで,どうしたものか長官,侍従長にお問い合わせがあった。
この御懸念は尤もなことであり,宮内庁としても,いずれ天皇皇后両陛下のお気持
ちをご一緒にお示しいただくことが望ましいと判断し,また,その時期もお誕生日
というご慶祝の機会ではなく,改めて別の機会にしていただくよう両陛下にお願い
申し上げてきたところである。
一方,両陛下からは,今後の御陵及び御喪儀のあり方について,かねてよりご意
向をお示しいただいてきたところであるが,この質問の出された昨年来,更に折に
触れて,ご意向をお伺いする機会をいただき,今回,宮内庁として両陛下のご了解
を得てお気持ちをおまとめしたので,これをもって,質問に対する回答とするもの
である。
〔検討に至る経緯について〕
天皇皇后両陛下には,ご即位以来,国と社会の要請や人々の期待におこたえにな
り,象徴として,あるいはそのご配偶として心を込めてお務めをお果たしになって
いらしたが,いつとはなしに,将来のお代替わりのことについて思いを懐かれるよ
うになり,また武蔵陵墓地の御陵をご参拝の機会にも,今後の御陵のあり方につい
て思いを致され,かなり早くから,お二方の間で御陵及び御喪儀のことについてお
話し合いになると共に,このようなことは,御自身方のお気持ちだけで決められる
ことではないからと,折に触れ長官や参与の意見にも
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〔今後の御陵及び御喪儀のあり方全般について〕
天皇陛下には,皇室の歴史の中に,御陵の営建や葬儀に関し,人々に過重な負担
を課することを望まないとの考え方が古くよりあったことにかねてより思いを致し
ておられ,これからの御陵や御葬送全体についても,極力国民生活への影響の少な
いものとすることが望ましいのではないか,とのお気持ちをお持ちであった。
同時に陛下には,これまで長きに渡り従来の皇室のしきたりはできるだけこれを
変えず,その中で今という時代の要請も入れて行動することを心がけていらっしゃ
り,御陵及び御喪儀のあり方についても,そのお気持ちに変わりはない。
〔御陵について〕
天皇陛下には,昭和天皇陵と香淳皇后陵が,大正天皇陵と貞明皇后陵の場合と異
なり,隣接して平行に設置される形になっていないことをご覧になり,御陵用地に
余裕がなくなってきているのではないかとのご感想をお述べになってこられたこと
は,昨年4月の発表の際にお伝えしたところであるが,陛下には,このように武蔵
陵墓地内に御陵用地を確保するには限度があることをおもんばかられ,今後品位を
損なうことなく御陵を従来のものよりやや縮小することができれば,とのお気持ち
をお持ちになったところである。
また,御陵をやや縮小することにより,武蔵陵墓地内に,昭和天皇陵,香淳皇后
陵をお囲みする形で,ご自分方お二方を含めこれからも何代かに渡り御陵が営建さ
れ,皆様が離ればなれにならずにお鎮まりになることが可能になるのではないかと
のお気持ちもおありであった。さらに,天皇陛下には,御陵の歴史の中で,かつて
合葬の例もあったことから,合葬というあり方も視野に入れてはどうか,とのお考
えをお持ちであったが,この合葬とすることについては,皇后さまから,御自身昭
和の時代にお育ちになり,「上御一人」との思いの中で,長らく先帝陛下,今上陛
か み ご い ち に ん
下にお仕えになってきた経緯からも,それはあまりに畏れ多く感じられるとされ,
また,御自分が陛下にお先立ちになった場合,陛下のご在世中に御陵が作られるこ
とになり,それはあってはならないと思われること,さらに,遠い将来,天皇陵の
前で祭事が行われることになる際に,その御陵の前では天皇お一方のための祭事が
行われることが望ましく,陛下のお気持ちに深く感謝なさりつつも,合葬は御遠慮
遊ばさねばとのお気持ちをお示しであった。
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ただ,御陵の大きさや配置に配慮することで,御自分方を始めとし,せめて昭和
天皇を直接間接にお身近に感じ上げている世代の方々が,昭和天皇香淳皇后のお近
くにお鎮まりになることが出来れば,とのお気持ちは皇后さまも陛下と共通してお
持ちであり,その上で,用地の縮小という観点,また,合葬をとの陛下の深い思召
しにお応えになるお気持ちからも,皇后陵を従来ほど大きくせず,天皇陵のおそば
に置いて頂くことは許されることであろうか,とのお尋ねがあった。
〔ご火葬について〕
御喪儀のあり方に関することがらのうち,ご葬法については,天皇皇后両陛下か
ら,御陵の簡素化という観点も含め,火葬によって行うことが望ましいというお気
持ちを,かねてよりいただいていた。
これは,御陵用地の制約の下で,火葬の場合は御陵の規模や形式をより弾力的に
検討できるということ,今の社会では,既に火葬が一般化していること,歴史的に
天皇皇后の葬送が土葬,火葬のどちらも行われてきたこと,からのお気持ちであ
る。
ご火葬施設について,両陛下のご身位に鑑み,既存の施設によらず,多摩の御陵
域内に専用の施設を設置申し上げたい旨,両陛下に申し上げたところ,その場合に
は節度をもって,必要な規模のものにとどめてほしい,とのお気持ちをお示しであ
った。
〔葬場殿の儀の場所について〕
国葬の場合は,その関係者の意見もあろうが,崩御後皇室として執り行う葬場殿
の儀の場所については,国民が広く利用している場所を長期間占用したり,葬場の
設営に際して多くの樹木の伐採をしたりすることがないかなど,国民生活や環境へ
の影響といった点に留意する必要がある,とのお考えをお持ちである。
さらに,両陛下には,近年特に顕著になっている気象条件の急激な変化を非常に
心配しておられ,御喪儀に参列される内外の方々に万一の事があってはならず,暑
さや寒さに加え,集中豪雨や竜巻などの可能性も十分考慮し,出席者の安全確保が
出来る場所を,皇太子殿下や秋篠宮殿下など殿下方の御意見も伺いつつ選定してほ
しいとのお気持ちをお示しいただいたところである。