観測史上最も明るいガンマ線バーストは「超新星で発生」JWST観測で裏付け Jamie Carter によるストーリー • 48 分 • 読み終わるまで 2 分

観測史上最も明るいガンマ線バーストは「超新星で発生」JWST観測で裏付け© Forbes JAPAN 提供

観測史上最も明るいガンマ線バーストGRB)の発生源は、大質量星の崩壊にともなう爆発現象の超新星だったことを、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡JWST)の観測データを用いて突き止めたとする研究結果が、専門誌Nature Astronomyで発表された。

24億光年の彼方から飛来したこのガンマ線の強烈な閃光「GRB 221009A」は、2022年10月9日の日曜日に太陽系に到達した。史上最も明るい(Brightest Of All Time)の頭文字を取った「BOAT」というニックネームで呼ばれている。

史上最も明るい

10時間にわたり検出され続けたGRB 221009Aは、過去最も明るかったガンマ線バーストの70倍も明るく、発生頻度は1万年に1回と極めて稀な現象だという。非常に明るかったため、世界のガンマ線検出器の大半を飽和状態に陥らせた。

GRBは宇宙で最も強力な種類の爆発現象で、光速の近くまで加速された粒子のジェットが宇宙空間に噴出する。超新星に由来すると考えられているが、今回の爆発現象が検出された直後は、GRB 221009Aが飛来した矢座の方向では、その痕跡を示すものは何も観測されていなかった。

ガンマ線バーストGRB 221009Aが、2022年10月9日に最初に検出されてから同年10月27日までに徐々に暗くなる様子を捉えた連続画像。欧州南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLTで撮影(ESO/Malesani et al., The Stargate collaboration)© Forbes JAPAN 提供

ガンマ線バーストGRB 221009A」が、2022年10月9日に最初に検出されてから同年10月27日までに徐々に暗くなる様子を捉えた連続画像。欧州南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLTで撮影(ESO/Malesani et al., The Stargate collaboration)

金探し

1つの謎は解けたが、もう1つの謎が深まった。今回の研究により、GRB 221009Aが超新星によって引き起こされたことの確信が得られた一方、金や白金などの重元素の痕跡は何も見つからなかったのだ。金や白金などの重元素(鉄より重い元素)は、超新星で生成されると考えられていたが、科学者らは今やそう断言できなくなっている。

今回の研究を率いた米ノースウエスタン大学エバンストン校の博士研究員ピーター・ブランチャードは「GRB 221009Aが大質量星の崩壊によって発生したと確認されたことにより、宇宙で最も重い元素の一部がどのようにして生成されるかに関する仮説を検証できるようになった」と述べている。「重元素の痕跡は確認されなかったが、これはBOATのような超高エネルギーGRBが重元素を生成していないことを示唆している。すなわち、超新星は宇宙の重元素の主要な生成源ではないことが示唆される」

超新星の痕跡

JWSTを用いた今回の観測は、GRBの検出から約半年後に実施された。「このGRBは非常に明るいため、爆発後の最初の数週間から数カ月間は、GRBが邪魔をして潜在的超新星の痕跡が見えなくなっていた」と、ブランチャードは説明する。「この間は、GRBのいわゆる残光のせいで、直進してくる車のヘッドライトがまぶしくて車自体が見えなくなるのと似たような状況だった」

科学者らは、残光が著しく暗くなり、超新星を観測する機会が得られるまで待たなければならなかった。だが、カルシウムや酸素などの超新星に特徴的な元素は検出されたが、超新星自体は明るいものではなかった。「超高エネルギーで明るいGRBを引き起こしたのと同じ恒星の崩壊なら、超高エネルギーで明るい超新星を引き起こしても不思議はないと思われるかもしれない」と、ブランチャードは指摘する。「しかし、そうではないことが明らかになっている。今回の場合、GRBは極めて明るいのに、超新星は普通なのだ」

このイベントでは、ガンマ線を検出するように設計された衛星でこれまでに記録された最高レベルのエネルギーを持つ光子がいくつか生成された。「宇宙全体で起きているこの種の爆発現象を検出できる技術がある時代に生きることができて幸せだ」と、ブランチャードは話している。

forbes.com 原文