妊婦が出産する際に、手術によって赤ちゃんを取り出す帝王切開。自然分娩(ぶんべん)では産めない場合に一般的な方法だ。出産に占める割合は日本では2割程度だが、中東エジプトでは7割を超え、「経済問題にもなっている」という。何が起きているのか。
首都カイロに住むノウラ・ゴウダさん(28)は3児の母だ。7年前、最初に長男を出産した際の自らの経験を語ってくれた。
陣痛が始まり、クリニックに行くと、医師は「自然分娩できますね」と言った。
その2時間後、ノウラさんは陣痛に耐えきれなくなった。最初から帝王切開と決めていた、妊婦の友人のことが頭に浮かんだ。
「赤ちゃんが窒息するのでは」と不安になった。思わず医師に懇願した。「やっぱり帝王切開にしてください」
立ち会っていた義母が「自然分娩を待つべきです」と遮ったが、医師は最終的にノウラさんの希望を受け入れた。
3回の出産のうち、産み方を自分で選ぶことができたのは、その時だけだった。一度、帝王切開で産んだ母親が2度目以降、自然分娩することを医師は認めなかった。
手術の間は痛みを感じなかったが、術後の痛みは長く残った。「最初の出産で、もっと辛抱すればよかった。娘には自然分娩させたい」
カイロの食品会社員ラギアさん(34)は昨年2月に長男を出産した。自然分娩を強く望んでいたが、臨月に入って触診した医師に告げられた。「逆子です。帝王切開にしましょう」
手術は2日後に設定された。陣痛を経験することなく、30分ほどで終わった。ただ、その後3日間は術後の痛みで身動きも難しかった。
医師のことは信用している。ただ、あのとき超音波診断の映像を自分で見て、納得ずくで手術を受ければよかったと悔やんでもいる。
帝王切開が多いことを、医師はどうみているのか。